歯科口腔外科疾患Oral Surgery Symptoms

笑顔で口元を指差す女性の写真

歯科口腔外科疾患Oral Surgery Symptoms

Diseases: Oral and Maxillofacial Surgery

身体は硬組織(骨、歯)と軟組織により構成されています。口腔は、上下の顎骨に、筋肉、血管、神経、唾液腺、リンパ組織、結合組織、脂肪などの軟組織が取り囲み、口腔の内側は口腔粘膜が覆い、外側は顔面皮膚が覆っています。
口腔の一番の特徴は歯があることで、歯と接する歯肉(歯茎)の部分は、硬組織と軟組織が付着する特殊な部分で、この付着がはがれるといわゆる歯周ポケットとなり、ここから細菌が感染します。口の細菌は500~700種類あるといわれ、歯周ポケットから血管の中へ、未治療のむし歯から顎骨の中へ細菌が侵入しますので、口腔だけの問題ではなく全身の健康にも関係することは容易に想像できるでしょう。
これまでに口腔細菌は糖尿病、動脈硬化、炎症性腸疾患、関節リウマチ、がん、認知症など、さまざまな疾患の発症やリスクを高めるといわれています。

さて、歯科医療の目的は口腔に発現する病気の予防と治療ですが、その大部分はむし歯と歯周病で、これらを歯科の二大疾患とよんでいます。
しかし、それ以外にも舌がんのような悪性腫瘍や唾液腺の結石、顎骨の発育異常など多様な疾患が発現します。
口腔外科はむし歯と歯周病以外の口腔顎顔面に起こる疾患を主な対象とします。それは多種多様で、先天異常、発育異常、損傷、口腔粘膜疾患、炎症、嚢胞、腫瘍、顎関節疾患、唾液腺疾患、神経疾患、血液疾患などがあります。

口腔外科では診察や検査により診断をつけ、外科的治療(手術)を中心に行いますが、疾患によっては薬物療法などの内科的治療や、口腔ケアによる衛生面と機能面の管理が適応となることもあります。

歯および歯周組織に発現した疾患が、上・下顎骨やその周囲の軟組織(舌、口底、口蓋、口唇、頬部、唾液腺)から頸部にまで拡大することがあり、外科的治療(手術)の範囲は口腔を中心として顎骨、顔面、頚部におよぶことがあります。
手術範囲が広い場合は、患者の身体的負担はもちろん心理的負担も大きいため、全身状態を管理しながら痛みと意識を消失させる全身麻酔が適応されます。術中と術前後の周術期には点滴注射による薬物治療、全身状態の管理や看護、口腔の衛生と機能の管理、流動食などの食事管理も必要であるため入院治療が行われます。

顎変形症

顎変形症は、上顎骨・下顎骨の大きさや形、位置の異常、上下顎関係の異常によって顎顔面の形態的異常と咬合の異常をきたして美的不調和を示すものと定義されています。
主な原因は顎骨の発育異常(過成長または劣成長)で、思春期以降の成長に伴って症状が顕著となります。

症状

顎骨と歯並びは口腔と下顔面(顔面の下3分の1部分)の骨格をなすため、顎骨の大きさや位置の異常は顔面輪郭と咬合に直接影響し、口腔周囲の筋肉や顔面の表情筋および顎関節に影響をおよぼすことがあります。

また、咬み合わせの異常は咀嚼や発音の障害、齲蝕や歯周病のリスクファクターとなるほか、顔面形態から心理的コンプレックスを伴うこともあります。 また、下顎が小さいあるいは後退している場合は睡眠時無呼吸症候群の原因になり、呼吸器内科や睡眠専門クリニックから紹介される患者さんもいらっしゃいます。

治療

顔面形態と咬合の改善ならびに咀嚼や発音などの口腔機能の改善と健全な口腔環境の獲得を目的に、歯科矯正治療と顎矯正手術を組み合わせた外科的矯正治療が適応されます。詳しくは治療の流れを参照して下さい。

顎変形症治療の流れ

  • STEP 01診査・診断

    矯正歯科または口腔外科により「診察」「検査」「診断」を実施します。

  • STEP 02術前矯正治療

    上顎と下顎の歯並びをそれぞれの顎骨に対して正常に並べます。治療期間は1~2年です。

  • STEP 03入院
    (顎矯正手術)
    顎矯正手術のイメージ
    顎矯正手術のイメージ

    入院のうえ、全身麻酔下に顎矯正手術を行います。
    手術はすべて口腔内切開により上下顎の骨切り術を行い、予定した咬み合わせになるように顎骨を移動しプレートで固定します。このとき、顔面全体の調和と口腔機能を考慮しながら顎の位置を決定します。
    当院では手術歴30年以上の口腔外科専門医が、形態と機能の調和ならびに低侵襲手術を理念として、福岡歯科大学ならびに福岡大学病院口腔外科のバックアップのもとに毎週1~2例の手術を行っています。
    全身麻酔は、経験豊富な常勤の麻酔専門医が術中・術後の全身管理を担当し、専任の手術室ナースが手術と全身管理をサポートします。

    手術時間は4~5時間、出血は約400mL以下です。手術後に顎間固定は行いませんので手術直後から開口でき、会話も可能です。手術翌日から流動食の経口摂取を始めます。3~4日後にはお粥と柔らかい副菜を食べます。入院期間は10~12日です。

  • STEP 04術後矯正治療

    退院後は再び矯正歯科を受診し、術後の矯正治療で噛み合わせの微調整を行います。治療期間は約6か月です。

    • 顎骨の固定に使用した金属プレートは、術後矯正治療の後、全身麻酔下に除去手術を行います(3日入院)。
    • 顎変形症の治療は、術前後の矯正治療、入院治療、プレート除去手術も含めて健康保険が適用されるため、患者さんの負担は小さくて済みます。

周術期等口腔機能管理(口腔ケア)の流れ(手術の前後、化学療法の前後など)

  • STEP 01依頼

    手術前など、担当医から歯科口腔外科へ診察依頼をしていただきます。

  • STEP 02歯科口腔外科診察

    歯科口腔外科で診察・検査を行います。
    歯面清掃・歯石除去・保湿ケア・歯ブラシ指導などの​口腔ケアを実施し、​口腔機能の保健指導をいたします。

  • STEP 03術後口腔ケア

    手術のあとは、歯科医師・歯科衛生士が病棟を訪問、または外来にて専門的口腔ケアを行います。

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